自首するとどのくらい減刑されるのか?メリット・デメリット

犯罪を犯してしまった場合、刑罰を軽くするための行動として、自首が挙げられます。では実際に自首すると、どのくらい刑が軽くなるのでしょうか。また自首することのメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

本記事では自首するとどのくらい刑が軽くなるのか、また自首のメリット・デメリットについて解説します。

自首とは

自首とは、犯罪を犯した本人が自ら自発的に捜査機関に名乗り出ることをいいます。

自首をした場合、刑を減軽する措置について次のような規定が置かれています。

一般的な自首による減軽

刑法第42条は、罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときに、減軽することができる旨が規定されています。あくまで減軽することができるだけなので、必ず刑が軽くなるわけではないことに注意が必要です。

内乱予備罪・内乱陰謀罪・内乱等幇助罪の自首

内乱予備罪内乱陰謀罪(刑法第78条)・内乱等幇助罪(刑法第79条)にあたる行為を行った場合でも、暴動に至る前に自首したときは、その刑は免除されます(刑法第80条)。この場合の免除は必ず行われます。

私戦予備・私戦陰謀罪の自首

私戦予備私戦陰謀罪(刑法第93条本文)にあたる行為を行った場合でも、自首した場合には刑は免除されます(刑法第93条但書)。この場合の免除も必ず行われます。

身の代金目的略取等予備罪の自首

身の代金目的略取等(刑法第225条の2第1項)の罪を犯す目的で、その予備行為を行った場合、身の代金目的略取等予備罪が成立します(刑法第228条の3本文)。ただし、身の代金目的略取等の実行に着手する前に自首した場合には、その刑を減軽または免除されます。この場合の減軽・免除も必ず行われます。

自首するとどのくらい刑が軽くなるのか

自首するとどのくらい刑が軽くなるのでしょうか。

刑が必ず免除される場合

自首によって刑が必ず免除される場合には、免除が確実です。

刑が軽くなる場合

身の代金目的略取で刑が軽くなる場合、刑法第43条1項の一般的な自首によって刑が軽くなる場合には刑法第68条の規定のルールに従って減軽されます。

一般的な自首による減軽
  • 死刑を減軽するときは、無期の懲役もしくは禁錮または10年以上の懲役若しくは禁錮に減らす
  • 無期の懲役または禁錮を減軽するときは7年以上の有期の懲役又は禁錮に減らす
  • 有期の懲役または禁錮を減軽するときはその長期及び短期を1/2に減らす
  • 罰金を減軽するときは1/2に減らす
  • 拘留を減軽するときはその長期の1/2に減らす
  • 科料を減軽するときは1/2に減らす

なお、令和7年6月1日からは懲役・禁錮が拘禁刑に統一されますが、拘禁刑に統一された後には次のようになります。

拘禁刑に統一された後の減軽
  • 死刑を減軽するときは無期又は10年以上の拘禁刑に減らす
  • 無期拘禁刑を減軽するときは7年以上の有期拘禁刑に減らす
  • 有期拘禁刑を減軽するときは長期及び短期を1/2に減らす
  • 罰金以下は変更なし

たとえば、窃盗罪は10年以下の懲役と法定されています。懲役はもっとも短いものが1ヶ月なので(刑法第12条)減軽によって2週間~5年以下の懲役となります。

自首のメリット・デメリット

では自首にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

自首のメリット

自首のメリットとして次のものが挙げられます。

逮捕を免れる可能性がある

逮捕を免れる可能性がメリットの1つです。

逮捕は逃亡や証拠隠滅の恐れがあるときに行われます。自首をすることで逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断でき、逮捕を免れる可能性が高まります。

起訴を免れる可能性がある

起訴を免れる可能性がメリットの1つです。

犯罪が行われた場合でも必ず起訴されて有罪となるわけではなく、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」とされ(刑事訴訟法第248条)、起訴するかどうかを検察官の判断にゆだねています。自首をしたことは検察官が起訴しないという判断に強い影響を与えるため、起訴を免れる可能性が高まります。

刑の減軽がされる

刑が軽くなることは、自首の大きなメリットの1つです。

自首により、逮捕や起訴後に有罪となった場合でも、刑が軽減される可能性があります。特に、法定刑の重い犯罪でも、刑の軽減によって執行猶予が適用される場合があり、大きな恩恵を受けることができます

自首のデメリット

一方で自首には次のようなデメリットもあります。

犯罪を行ったことが捜査機関に発覚してしまう

犯罪を行ったことが捜査機関に発覚してしまうというデメリットがあります。

捜査機関が犯罪に気づかなければ捜査・逮捕・起訴されることはありません。自首しなければ犯罪がバレないというケースもあり、この場合には自首したほうが不利といえます。

時効が成立しなくなる

時効成立がしなくなるというデメリットがあります。

捜査機関にバレずに長期間経過すると、時効によって罪に問えなくなります。自首によって時効が成立しなくなるので、時効間近の場合には、自首は不利となる可能性があります。

逮捕されてしまう

自首してもそのまま逮捕されてしまう可能性があるというデメリットがあります。

自首をしたからといって必ず逮捕されないわけではなく、逃亡・証拠隠滅のおそれがある場合には逮捕されてしまいます。必ず逮捕されないわけではないので注意が必要です。

まとめ

本記事では、自首によってどの程度刑が軽くなるのか、自首のメリットとデメリットについて解説しました。刑法の規定に基づき、自首をすることで刑が軽減されるだけでなく、逮捕や起訴を回避できる可能性も高まります。犯罪を犯してしまった場合には、自首は被害者との示談と並ぶ重要な対応方法の一つです。

逮捕や起訴を避けるためには、真摯に反省し捜査に協力する趣旨で自首していることを示す必要があり、どのような準備をすればいいか、また被害者との示談が必要かどうかも慎重に検討する必要があります。自首する場合でも弁護士に相談しながら自首することをおすすめします。