犯罪を行った人が、逃亡をしたり証拠隠滅を防ぐために、身柄を拘束することを逮捕といいます。この逮捕には大きく分けると3つの種類があるのですが、それぞれどのような内容なのでしょうか。
本記事では逮捕の3つの種類とその内容について解説します。
逮捕の3つの種類
逮捕には大きくわけて次の3つの種類があります。
それぞれ逮捕の要件や手続きが異なるので、どのような場合に逮捕されるのか、その手続きについて確認しましょう。
通常逮捕
後述する現行犯逮捕・緊急逮捕以外の逮捕のことを通常逮捕といいます。
通常逮捕に関しては、日本国憲法第33条および刑事訴訟法第199条に、次のような内容が規定されています。
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。
日本国憲法第33条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。
刑事訴訟法第199条本文
以上の規定にあるように、通常逮捕をするには、裁判官があらかじめ発する逮捕状が必要です。もっとも、30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の場合には被疑者が定まった住居を有しない場合か、正当な理由がなく出頭の求めに応じない場合に限られます(刑事訴訟法第199条但書)。
逮捕状を発する要件については刑事訴訟法第199条第2項但書で「明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。」と定めており、通常逮捕のための逮捕状の発布のためには、逮捕の必要性が要件となります。逮捕の必要性については、刑事訴訟規則第143条の3において「逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢や境遇、犯罪の軽重や態様、その他諸般の事情に照らし、 被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。 」と規定しており、逃亡・罪証隠滅の恐れがある場合であるといえます。
現行犯逮捕
現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者の逮捕を現行犯逮捕といいます。
現行犯逮捕については刑事訴訟法第222条第1項に「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。」と規定されており、続く刑事訴訟法第223条第2項で「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」と規定されています。
これらの規定から、現行犯人については逮捕状なしで逮捕できるほか、誰でも逮捕できるため、警察などの捜査機関ではない人も逮捕が可能です。昨今私人逮捕系Youtuberが問題となりましたが、逮捕自体が違法ではないのはこの規定に基づくものです。なお、警察・検察以外の人が逮捕をした場合には、直ちに警察・検察に引き渡さなければなりません(刑事訴訟法第224条)。
なお、次の事由があり罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときには、準現行犯逮捕が認められています(刑事訴訟法第222条第2項)。
緊急逮捕
一定の重大な罪が法定されている犯罪を犯したと疑うに足りる十分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときに、その理由を告げておこなう逮捕が緊急逮捕です。
刑事訴訟法第210条に規定されています。上述した憲法第33条に規定されていない逮捕である点で、合憲性が争われたことがありますが、最高裁判所昭和30年12月14日判決によって合憲とされています。
要件として次の5つが必要です。
裁判所が逮捕状を発しない場合には、直ちに被疑者を釈放しなければなりません。
犯罪を犯してしまった場合の対応方法
犯罪を犯してしまった場合には、どのように対応すべきなのでしょうか。
まだ逮捕されていない場合
まだ逮捕されていない場合、これから警察・検察が捜査をおこないます。逮捕に先立って任意同行を求められることがあり、証拠がある程度つかめると逮捕状の請求をして逮捕をします。
この場合には逮捕されないようにする行動と、起訴されないようにする行動が必要です。そのためには、自首・被害者との示談などが欠かせません。
すでに逮捕されている場合
すでに逮捕されている場合には、身柄拘束を解いてもらうための行動や、起訴されないようにする行動が必要です。この場合には罪を認めて捜査に協力する姿勢を見せたり、被害者と示談をすることが必要です。もっとも被害者と示談したくてもすでに身柄を拘束されているため、弁護士に依頼して弁護士を通じて示談をする必要があります。
まとめ
本記事では、逮捕の種類を中心に解説しました。
逮捕には通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕の3つの種類があり、それぞれシチュエーションに応じて要件を満たす必要があります。逮捕されそうな場合には逮捕・起訴されないように、すでに逮捕されてしまった場合には身柄拘束を解いてもらい、起訴されないように適切な行動をする必要があります。弁護士に依頼して、適切な対応を依頼することが重要です。